人は自分が本当に心から作りたいものがあるからビジネスを始めると思います
Funfo
喬恒越、張舜智 (來自 中国、台湾)
出身学校:立命館大学
※2021年採訪
日本、京都への留学を決めたきっかけは何でしょうか。
喬(チャオ)さん:チャンが日本に留学すると決めた理由は、実は僕が誘ったからです。彼はもともと、スイスに留学に行く計画でした。
張(チャン)さん:僕が考えを変えたのにはいくつか理由があります。兄と妹が日本に住んでいたこと。そしてチャオが誘ってくれたことと、そして最終的には僕が日本の文化が大好きだったことです。
喬(チャオ)さん:日本のサブカルチャーは海外でとても人気で、多分留学生が日本を選ぶ動機でよくあると思います。これは僕ら二人にとっても同じことで、ビデオゲームやアニメが大好きなんです。チャンの場合は、もともとスイスで留学する予定だったけど、日本に来てみたらとても気に入って。スイスでの生活は全然違っていて、生活には車が欠かせないけれど、ここでは何もかもが便利だから。
なかでもなぜ京都を選んだのですか?
喬(チャオ)さん:僕は大きな街では育っていないので、京都の大学を選んだのは東京よりも気楽にいられる場所が良かったからです。京都に来る前の大きなイメージは、メディアでよく目にするような、お寺がたくさんある街というものでした。そして実際にこの街に来てみると、本当に想像通りでした。ここで勉強することを選んでよかったです。
張(チャン)さん:台湾人にとって、京都は東京よりももっと「日本的」だと感じます。この雰囲気はとても魅力的です。僕は自分が留学するなら、日本らしさを感じる場所が一番だと思っていました。
喬(チャオ)さん:僕らの会社のメンバーは東京で出会いましたが、みんな京都での暮らしの方が良いと言います。
学生時代に印象に残った思い出はありますか。
喬(チャオ)さん:僕らは同じ学生グループにいました。当時やっていたことと、今実際にビジネスで行っていることは違いますが、世界各国から集まったメンバーたちとゲームイベントを企画したのは特に楽しかったです。同時に、これは僕らが世界中の人が集まる立命館という大学に行ったからこそできたことだと思います。大学側も僕をよくサポートしてくれました。あの支援なしには、僕らの会社は始まりもしなかったでしょう。
張(チャン)さん:僕の思い出も大体同じです、チャオとは長い付き合いなので。卒論のために意見を出し合ったこともすごく良かったです。
喬(チャオ)さん:もうひとつ立命館で学ぶいいところに、3つのキャンパスを自由に行き来して、全キャンパスの留学生たちと交流ができたことがあります。
就職活動を検討しましたか?どんな風に会社を立ち上げる決断をされましたか?
張(チャン)さん:就活はあまり検討しませんでした。在学中から、自身のビジネスを立ち上げたいと決めていたので。自分で何かを作り上げる挑戦をしたいということは分かっていました。
喬(チャオ)さん:立命館での留学を始めた頃から、日本で働きたいと思っていました。学生の時から起業することは考えていて、実際にやってみて非常に面白いと感じました。実はシリコンバレーの企業精神のようなものにずっと惹かれてたのもあります。
どのようにして起業を決心しましたか?
喬(チャオ)さん:この事業は実は、僕たちが作ったゲーム戦略サイトから始まりました。僕らは皆こういったサブカルチャーに魅了されていて、Webサイトを制作することにしたのです。イベントも開催して、Webサイトはとても人気になりました。楽しくて、少し収入も得られましたが、それだけではチームのみんなの生活は支えられないという現実を目の当たりにしたので、僕らが持っている技術的なノウハウを活かす他の方法を考え始めました。僕らは飲食業界をターゲットに選びました。労働者不足で、成功するには障害の多い業界です。京都には多くの観光客がやってきますが、外国語のメニューがないレストランは多くありました。京都と大阪の市場調査を行った結果、僕らはこの問題を解決する携帯アプリを作りました。
残念ながら、僕らがビジネスを始めた直後に新型コロナウイルスの大流行が起こりました。その変化に対応するために、テイクアウトの注文受付や宅配機能の実験を始めました。今では感染状況も少し落ち着きつつあるので、多くの注文を受けるようになりました。製品のアイデアは、レストランで注文のためにQRコードを読み込むというシンプルなものですが、そこから日本の文化や物事のやり方にどうやって合わせるかを見つけ出す必要がありました。そこで、このシンプルなアイデアを発展させて、必要に応じて調整をして、改善した結果、今日のアプリの形になりました。携帯アプリですがPOSシステムも備えています。注文全てを携帯電話で完結させるのは(日本の環境上)すぐには難しいので、このアプリは必要最低限の機能を備えています。
というのも、中国では多くの飲食店経営者は効率を重視してシステムを全導入することはありますが、日本では配慮や思いやりが価値を持ちます。常連客や年配の顧客がたくさんいるお店では、スマートフォンで注文をするシステムに急に切り替えることによって、年配の顧客が対応できずに注文が入らなくなってしまうことを心配するオーナーが多いです。これらの意見を尊重して、僕らは新たな機能を追加する一方で、これまでの運営方法も残すことに気を付けました。改革にあたっては誰も見たことがないものを急に作って、顧客がすぐに受け入れることを期待してはいけません。人々の声に耳を傾け、タイミングを計り、市場が受け入れてくれる状況になって初めて、新たなものを次々と出していくことができるのです。
結果として、新型コロナウイルスの流行は、企業の新たなデジタル戦略導入を後押しすることになりました。昨年は飲食店の経営者にアプリのサービスを説明するのにも苦労しましたが、今は導入してくれたお店のお客さんからも好評だと聞いています。
Funfo様の事業について教えてください。
張(チャン)さん:Funfoとは飲食店のための携帯注文アプリで、複数言語のメニューをクラウド保存しているものです。店舗内注文、テイクアウトとデリバリー、それから支払いまでがアプリ内で完結できます。ゆくゆくは、マーケティングやマネジメントを駆使して、飲食店が「スマートレストラン」を立ち上げられるプラットフォームを作りたいです。
喬(チャオ)さん:一般的に、飲食店は「注文を受ける」「支払いを受ける」「データ分析」の3つをしなくてはなりません。現在僕らのサービスではその注文と支払いについては対応できています。携帯でQRコードを読み込むとメニューが出てきて、欲しいものを選ぶと商品がカートに入って支払いができるのです。飲食店側には注文を確認するiPadとプリンターがあり、顧客は電話や店側との会話なしに注文をすることができます。簡単で、多言語のメニューもあります。西欧諸国からの旅行者にとって、多言語メニューなしで理解するのが特に難しい商品もあるはずなので、役に立つと思います。
京都スタートアップビザについて教えてください。知ったきっかけ、申請のプロセスなどはどんなものだったでしょうか。
張(チャン)さん:京都スタートアップビザについては、大阪のイノベーションハブで初めて知りました。僕らがJETROの京都オフィスに問い合わせたのが大体2019年5月で、その月末には申請前の相談会に行って、どんなサービスを提供したいのか簡単なプレゼンテーションを行いました。JETROの人達は申請に際してたくさんサポートしてくれて、ビザの手続きは非常にスムーズでした。申請はうまく受理されて、7月にはビザを取得できました。JETROは僕らがビザを取ったあとも良くしてくれて、特に法律に関して、行政書士の人を紹介してくれました。
喬(チャオ)さん:申請手続きはJETROのサポートでとても簡単になりました。申請書の記入においても多くの助言をくれたおかげで手続きも難しいとは感じませんでした。京都の留学生誰しもにとって、ここはスタートアップをやっていくには良い環境だと思います。
現在の仕事のやりがいを教えてください。
張(チャン)さん:台湾にもこのようなものはないので、自分たちが作ったサービスを台湾に持ち帰りたいです。日本と台湾には共通点があるし、ここでうまくいくものは地元でもうまくいく気がします。
喬(チャオ)さん:僕は、人は自分が本当に心から作りたいものがあるからビジネスを始めると思います。なんせ苦労するから。(笑)中国でも上海や北京には似たようなサービスがあります。日本でいいサービスを作って世界各国に広げていくのが夢です。フランスやドイツの田舎の小さな飲食店などには向かないかもしれませんが(笑)でも、多くの人の役に立つと思います。
これから日本で働くこと検討している留学生の皆様にPRやメッセージをお願いいたします。
喬(チャオ)さん:僕が大学で仲良くなった留学生友達のグループは決して大きいものではありませんでしたが、強い絆が生まれました。そんな友人たちと一緒に何かができるのなら、絶対にやった方がいいと思います。そんな珍しい機会はありません。また、留学生たちは日本人たちが気づけない点に気づくことができます。文化的な違いは、いろんなチャンスに繋がります。それこそが留学生たち独自の強みなので、それを活用してください。これは起業に関してだけでなく、就職活動においても使えるアドバンテージです。皆さん、頑張って!
張(チャン)さん:自分自身に挑むことが大切です。確かに難しいことだけれど、思っているほど難しいことではありません。あなたにはできます!