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STUDY KYOTO MAGAZINE

京都国際マンガミュージアム探訪! ~マンガ研究を支える「研究閲覧室」とは?!~

「研究閲覧室」とは?

それでは3階の「研究閲覧室」に戻ります。「研究閲覧室」は、簡単に言うと、先ほど紹介した収蔵庫にある約25万点の資料を見ることができる特別な部屋です。大きな目的は、マンガの研究・調査の支援にあるそうですが、研究者でない方でも、18歳以上であれば、登録をして利用することができると教えてもらいました。大学のレポートや卒業論文などの資料探しに、大学生が利用することもできるのです。

「研究閲覧室」には司書の方がいて、資料の整理の他に、マンガ探しのお手伝いをされています。「昔読んだマンガをもう一回読みたいけどタイトルを忘れてしまった」という方が相談に来られることもあるそうですよ。探しているマンガがある人は、相談に行ってみてはどうでしょう?

*研究閲覧室

開室日時:金曜日、日曜日10:30~16:30

利用方法:利用したい日の1週間以上前に予約が必要です

https://kyotomm.jp/research/

娯楽から研究対象へ~文化とつながるマンガ

最後は、「研究閲覧室」にて、中村さん、渡邉さんにマンガミュージアムについてお話を伺いました。

(研究閲覧室でインタビュー)

――研究閲覧室のことや、マンガの司書の方がいらっしゃるというのは、今日初めて知りました。この部屋を利用される方からよく聞かれる質問は何かありますか?

渡邉さん一番多いのは、ご自分が読みたい本があるかないかっていうことですね。ミュージアムにはたくさんの資料がありますが、もちろん日本で出版された全部のマンガがあるわけではないです。探しているマンガがあるかないか、そして、あるという時は必要な全部の巻がそろっているのかどうか、というのを調べて、ご案内します。

「研究」という言葉が名前についているお部屋ですが、研究者の方だけでなく、昔読んだマンガを探すため、相談に来られるということもあります。

 

――研究目的で利用される場合、どういった資料を探しに来られるのですか?

渡邉さん卒論や修士・博士論文などの場合、マンガの記号を調べたいとか四コママンガに関して調べたいとか、それぞれのテーマがあります。そういった研究目的の場合には、すでにある程度ご自身で調べているので、ご自分が持っている資料以外にも何かあるかどうか、というのを調べに来られることも多いです。この研究閲覧室の本棚にある本は、マンガに関する参考書と研究書なんですが、研究目的の資料探しには、こういった本が役に立ちます。実は、一か所でこれだけ揃っているのってなかなかないんですよ。大学や研究機関などの図書館でもなかなか揃っていないので、こちらに来られるという方もいらっしゃいます。研究書には後ろの方に参考文献が書いてありますよね。そこからまた調査対象が広がっていって、その文献があるかどうか調べていく、という風になります。

あと、先ほど地下の収蔵庫で見ていただきましたが、マンガ雑誌もたくさん収蔵しているので、それを探しに来る方もいますね。例えば、『少年ジャンプ』の数十年分って、自分の家で保管しようと思うと大変なので、どうしても捨ててしまいますよね。『ジャンプ』は1960年代から発行されたものですが、ミュージアムには結構揃っているので、それを順番に読んでいかれます。マンガ作品も時代とともに傾向が変わりますし、雑誌の中でマンガ以外に掲載されている部分もその時代の流行を映しています。そういう時代の流れを見るは、マンガ雑誌を読んでいくのが一番だと思います。

研究テーマはマンガ自体でなくても、マンガにつながるものはたくさんありますね。

(人気のマンガキャラクターとコラボして、おもちゃやお菓子なども生まれている)

――私は大学院で日本のファッション雑誌の変遷について研究しているので、ファッション雑誌をたくさん見ています。今のファッション誌は人物の写真がメインですが、昔の雑誌は、中原淳一さんなどによるファッションイラストがたくさん載っていました。それもマンガ文化につながりますね。

中村さん子どもの頃に読んだ少女マンガのファッションに刺激を受けるなど、日本の「カワイイ」文化は、マンガとはかなり近い位置にあると思います。

研究をされているファッション雑誌の変遷も、少女マンガ雑誌の変遷と一緒に見たりすると、面白いかもしれませんね。

今は色々なものがデジタル化していて、作画やデザインなどもデジタルデバイスでされる方も多いですが、昔はもちろんそんなことはなく、タイトルロゴなども手書きでされていました。そういうところに絞って、「デザイン」という切り口でマンガを研究することもできますね。

 

――デジタル作画の話が出ましたが、今の時代、色々なものがデジタル化されています。マンガを読んでいる人は少なくなっているのでしょうか?

中村さん単行本や雑誌など、紙媒体で読まれている数としては、減ってはいると思います。これはマンガ以外の書籍もそうだと思います。でも、その反面、インターネット上でマンガを読まれている方がすごく増えているので、マンガの売上としては、実は増えているようです。コロナ禍で家にいる時間も増えて、本を読む時間も増えたというのも一因かもしれません。

 

――今後の企画展について、少し教えていただけますか?

中村さん:毎年9月に京都市で、「京都国際マンガ・アニメフェア」が京都市で開催されるのですが、京都国際マンガミュージアムも会場の1つになっています。それに合わせて、森薫さん作の『乙嫁語り』を題材にした企画展を準備しています。日本のお話ではなく、中央アジアが舞台の色々な民族の「お嫁さん」を描いたお話なので、留学生にも興味を持ってもらえるかもしれませんね。
この作品を描かれるにあたって、作者の森薫さん自身、かなり対象地域の研究をされていて、文化・民族についても勉強になりますし、民族衣装もとても美しく描かれているので、絵を見るだけでも楽しめると思います。
京都国際マンガミュージアム「大乙嫁語り展」(2022年9月17日~12月26日)

https://kyotomm.jp/ee/otoyomegatari/

 

――それでは最後に、京都の留学生のみなさんにメッセージをお願いします。

中村さん皆さんそれぞれの国で、日本のマンガに触れていただいているかと思うのですが、例えば、「そこに出てくるアンパンの味はどんな味なんだろう」とか、「マンガで知った日本のお弁当文化ってどんな感じなんだろう」って、疑問を持たれている外国のマンガファンの方って結構いらっしゃるんです。今コロナ禍で、なかなか国を越えての行き来がしにくくなっていますが、留学という目的で縁があって日本に来ている留学生の皆さんの中にも、日本に来る前に日本文化についてマンガを通して最初に知った人もいると思います。ここ日本で、その文化を実体験しつつ、またそのマンガも一緒に楽しんでいただけたらな、と思います。せっかく京都にこういう施設があるので、歴史を感じながら、マンガ文化という側面でも日本を身近に感じていただけたら嬉しいです。

(マンガミュージアム外観)

最後に

今回の取材では、広報の中村さんと司書の渡邉さん・大谷さんにたくさんお話を聞き、普段は入れない収蔵庫を見学させてもらうなど、貴重な経験をたくさんさせていただきました。今までは「マンガの図書館」というイメージだったマンガミュージアムが、日本のマンガに関する研究資料をたくさん所蔵し、研究を支援している施設だと知って、「私の研究ともリンクする資料もあるかも」と、ワクワクしました。

近年、世界では、マンガを単なるコンテンツとしてではなく、日本が誇る「文化」として認知されてきていますが、このマンガミュージアムでも、常設・企画展示などを通し、様々な角度からマンガにアプローチし、その可能性を発信・提案してこられたのだなと感じました。

 

マンガを日本の文化・芸術だとして丁寧に収集・保管する一方で、来館者がくつろぎながら自由にマンガを読めるというのも、通常の博物館のイメージとは違って親しみやすいですよね。元小学校の建物を取り壊さず保存できたことの意義も大きいし、昔マンガを持ってきてはいけなかった学校という場所でマンガ読めるというコンセプトも、とても面白いと思います。

館内の楽しみ方は様々。マンガ好きでなくても、一度は訪れてみる価値ありです!ぜひ一度足を運んでみて下さい。

 

(文:京都芸術大学大学院・王璇)

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